陶酔 / Academia

遠くへ連れて行ってくれる動く大きなもの。空想少年を虜にした夢の残像です。
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原風景「空想駅」  うっとり探偵団「アカデ ミアサロン」 Academia Salon by Uttori Tanteidan  


暗雲迫る覚醒の風景から星降る銀河鉄道の駅へ。昔の夢少女・空想少年が憧れた懐かしい乗り物が待機していますが、これから乗るのか、もしかしたらやがて銀河鉄道で到着するカンパネルラとジョバンニを待っているのか。見る人によって物語は違います。かって車も船も飛行機も飛行船も20世紀初頭のアメリカの夢の象徴。摩天楼が乱立し、工場は真っ黒い煙を吐いていた時代。社会が夢と欲望に最も忠実な時代でした。そんな憧れの風景にも、夢破れてせめて幻想の世界に旅立つ風景にも見えます。駅に潜む妖しを「うっとり探偵団」が探検します。

1918年~1939年はアメリカ史上最高の繁栄と崩壊を体験した時期です。Wikipeidaはこんな描写をしています。リンドバーグが大西洋無着陸横断飛行に成功したり、ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグなどの野球スターが登場。市民を熱狂させ、大資本によるハリウッド映画が製作された。また大衆市民が手軽に株や土地を売買し、情報網の発達に伴って大都市を中心に流行したが、これは株価や地価を異常に高騰させる理由となった。アメリカが人類史上最高の「富」を手にしていることは、世界の誰が見ても明らかであったが、一方、農村部では大戦中の食物増産によって土地が疲弊し、その後の農業政策に失敗したことから、南部の小農家が更に没落し、離農して西部を目指すものが多く現れた。大都市が繁栄を謳歌する傍らで、農家は貧困を味わうという非常に「偏った富の時代」であった・・・やがて1914年から1918年にかけての第一次世界大戦後のヨーロッパの自力復興によってアメリカの輸出経済に陰りが生てきた。1929年9月の最高値を境に、株価はじわじわと値を下げ始めていた。しかし熱狂した市民はそれに注意することもなく株や土地の売買を続けたが、遂に1929年10月24日、いわゆる「暗黒の木曜日」を境に株価が一斉に大暴落し、史上最高の繁栄を誇ったアメリカはここに破綻した。アメリカの破綻は「世界の工場アメリカ」に経済依存していたヨーロッパ諸国や日本に波及し、1930年代を取り巻く世界恐慌となった。資本家は一斉に労働者の首切りを始めて大都市は失業者で溢れた。食糧の配給には長蛇の列ができ、浮浪者や犯罪者が増加して社会不安が蔓延。農家の没落も留まるところを知らず、逃れた西部にも彼らを受け入れる余地はどこにも無かった。かつての繁栄を誇ったアメリカは幻と消えたのである。

そんな時代を知るとこの駅は「古き良き時代の憧れの風景」ではなく「見果てぬ夢の駅」にも見えます。我々が風景に求めるのは「寂寥感」や「透明感」。真面目で正直な人では感じ得ない「成分」です。「国破れて山河あり」の世界です。真の陶酔は見果てぬ夢にこそあります。